ANAの国際線航空券のルールや運賃は、運賃種別と予約クラスによって概ね決まります。同じエコノミークラスの座席でも、運賃種別や予約クラスが違うと、航空券の予約変更や払い戻しの可否、運賃などが異なっています。具体的にどの程度運賃や条件が違うのか、どの予約クラスがコスパが良いのかをANAの東京―シンガポール線(日本発券)を例に解説してみます。
運賃種別と予約クラス
ANA国際航空券には、予約変更や払い戻しのルールに関係する「運賃種別」と、アップグレードの可否やマイルの積算率などに関係する「予約クラス」があります。まずはそれぞれについて解説します。
運賃種別
ANAには同じ座席クラスでも以下のような運賃種別が設定されています。
- Super Value
- Value
- Special
- Basic
- Flex
- Full Flex
これらの違いは予約変更と払い戻しの条件です。Super Valueだとどちらも不可、Full Flexだとどちらも手数料なしで可能となります。時々例外がありますが、基本的には上ほど安く(Super Valueが最安値)、下ほど高い運賃(Full Flexが最高値)になります。常にすべての運賃種別があるわけではありません。運賃種別の詳細はこちら
ANAのホームページから予約する場合、運賃種別は便を選ぶページの一番上(赤枠)に表示されています。
予約クラス
予約クラスは、運賃種別とは別にアルファベット1文字で表現されます。同じ運賃種別でも、予約クラスが低いほうが運賃は安くなりますが、マイルの積算率が低かったりアップグレードや座席指定に制限があったりします。空席が多いほど低い予約クラスの運賃が表示されます。
ANAの場合、ホームページで検索する際に予約クラスが表示されています(図中赤枠)。同じエコノミークラス、運賃種別Valueでも、予約クラスSだと片道あたり諸税込で32710円ですが、
予約クラスQだと片道あたり諸税込で61210円となり、およそ2倍の差があります。ただ、予約クラスSでは一部有料だった事前座席指定が無料になっています。また、マイルの積算率も予約クラスSでは50%ですが、Qでは70%になります。
東京―シンガポール線で通常販売されているエコノミークラスとプレミアムエコノミークラスの予約クラスは以下の通りです。予約クラスが複数ある場合、左ほど予約クラスが低いです。
エコノミークラス
Value
・S→W→V→Q→H
Basic
・U→M
Flex
・B
Full Flex
・Y
プレミアムエコノミークラス
Super Value
・N
Value
・E
Basic
・G
Full Flex
・G
コストパフォーマンスの良い予約クラスは?
各予約クラスの運賃とマイル積算率
コストパフォーマンスの良い予約クラスを探すために、東京―シンガポール線における運賃種別と予約クラスごとの運賃、マイルの積算率をまとめてみました。運賃は運賃種別や予約クラスが同じでも、出発日や利用する便によって追加料金がかかることがあります。例えば、Economy Valueの各予約クラスでNH841(羽田午前発)やNH844(シンガポール夜発羽田行)が含まれる旅程だと6500円の追加料金がかかります(つまり、NH841とNH844を利用して往復すると、13000円追加でかかります)。また、プレミアムエコノミーの予約クラスEは土曜日に滞在しない旅程だと値上がりします。以下では2019年10月現在の各予約クラスの往復運賃の最安値とマイル積算率をまとめています。
エコノミークラス
Value
S:49000円(50%)
W:59000円(50%)
V:77000円(50%)
Q:106000円(70%)
H:143000円(70%)
Basic
U:164000円(70%)
M:200000円(100%)
Flex
B:225000円(100%)
Full Flex
Y:414000円(100%)
プレミアムエコノミークラス
Super Value
N:104000円(70%)
Value
E:153000円(100%)
Basic
G : 201000円(100%)
Full Flex
G : 229000円(100%)
実際の航空券代金には上記の運賃に諸税とサーチャージが加わります。
エコノミークラスでは予約クラスが高くなるごとに1万~4万円ほど運賃が上がります。プレミアムエコノミーでは予約クラスが高くなるごとに3万~5万円ほど運賃が上がります。
エコノミーよりも安いプレミアムエコノミー
エコノミークラスの予約クラスがQ以上になる場合は、プレミアムエコノミーのほうが安いことがあります。エコノミークラスの最安値を検索した際に予約クラスQが出てくる場合はプレミアムエコノミーの運賃も確認してみましょう。このようなパターンは特に出発日が近いとよく見かけます。
マイル修行をするなら
マイル修行をする方が気にするpp単価(1プレミアムポイントを獲得するのにかかる費用)の観点から見ると、エコノミークラスの予約クラスV以上は許容範囲外でしょう。予約クラスSとWは片道あたり5000円の差ですので、まだ許容範囲ですが、予約クラスSとVは片道あたり17000円違い、予約クラスVで往復すると予約クラスSの1.5倍の運賃が必要になります。その一方で獲得できるプレミアムポイントは同じです。修行用ならなるべく予約クラスSかWで予約したいところです。それ以上になる場合はプレミアムエコノミーで予約したほうが搭乗ポイント(400pp)の分pp単価は良くなります。
有料事前座席指定は得なのか?
ANAは2019年夏からエコノミークラスの事前座席指定を一部の予約クラスで有料にしました。対象となる予約クラスはK, L, S, W, Vです(東京―シンガポール線の予約クラスKとLは期間限定運賃などで出ることがあります)。東京―シンガポール線の事前座席指定料金は片道2000円(非常口席は5000円)です。座席指定が一部有料となる最も高い運賃(予約クラスV)と座席指定に制限がない最も安い運賃(予約クラスQ)の差は往復29000円(片道14500円)です。そのため、座席指定のために高い予約クラスで予約するよりは、座席指定料金を払ったほうが安上がりです。
プレミアムエコノミー往復か、エコノミー+ビジネスか
東京―シンガポール間を往復ともにプレミアムエコノミーの運賃種別Super Value, 予約クラスNで予約すると、運賃は104000円+諸税となります。一方、プレミアムエコノミーの運賃種別Value, 予約クラスEだと他の予約クラスと結合できるので、片道をエコノミークラスの予約クラスS、片道をプレミアムエコノミークラスの予約クラスEとすることが可能です。予約クラスEは予約クラスNとは異なり、空席があればマイル(シンガポール線は18000マイル)やアップグレードポイント(シンガポール線は8ポイント)でビジネスクラスへアップグレードできます。この場合の運賃は101000円+諸税となります。この両者はほとんど同じ値段です。片道とはいえ、プレミアムエコノミー往復と同じ値段でビジネスクラスが利用可能なので結構お得だと思います。ANAの東京―シンガポール線のビジネスクラスはフルフラットにできるANAビジネススタッガードがすべての便で導入されています。ANAビジネススタッガードの搭乗記はこちら
worldwideharikov.hatenablog.com
ちなみに、プレミアムポイントは往復予約クラスNの場合は7754pp、片道を予約クラスS、片道を予約クラスEにした場合は7852ppで、運賃同様あまり違いがありません。プレミアムエコノミーでの往復を考えていた方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。
早く予約したほうが安いのか?
これは私個人の推測ですが、予約クラスを決める空席数は出発日までの日数によって変化していると思われます。つまり、例えば出発100日前の空席数と出発30日前の空席数が同じ場合、出発30日前のほうが低い予約クラスが出ている可能性があります。そのため、単純に早く予約したほうが安いというわけではないと思います。安い予約クラスがない場合は何日か粘り強く値段をチェックしてみると良いかもしれません。
まとめ
ANAの東京―シンガポール線を例にして運賃種別と予約クラスの解説をしました。国際線航空券は単純にエコノミーだと一番安い、というわけではなく、場合によってはプレミアムエコノミーのほうが安いこともあります。マイルの積算率を考えると、最安値の運賃よりも高い運賃のほうがコストパフォーマンスが良いこともあります。また、最も安い予約クラスでプレミアムエコノミーの単純往復をするよりも、エコノミーとプレミアムエコノミーを組み合わせるほうが、アップグレード特典と組み合わせることでコストパフォーマンスが良くなることもあります。運賃種別や予約クラスの特徴を把握しておくと、予約する時にコストパフォーマンスの良い運賃を選択することができます。参考になれば幸いです。以上、ANA予約クラスの解説でした。