2020年3月29日からの夏ダイヤでは、羽田空港国際線が増便される予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく計画が変更になりました。それから3年が経過し、世界の航空需要も復活し、日本の航空会社の国際線路線網もかなり復活してきました。具体的にどの程度復活しているのかを調べるために、2023年3月26日からの夏ダイヤについて、2020年夏ダイヤと比較を行ってみました。
ANAの2020年と2023年夏ダイヤの比較
2020年夏ダイヤでは、羽田空港国際線の発着枠拡大に伴い、多数の新規路線が開設されたり、成田からの路線移管が行われる予定でした。ANA国際線の2020年夏ダイヤにおけるスケジュールについては、こちらの記事にまとめてあります。
worldwideharikov.hatenablog.com
しかし、新型コロナの影響で、予定通り就航した路線はほとんどなく、ほぼすべての国際線が運休するような事態になってしまいました。
worldwideharikov.hatenablog.com
それから3年経過し、中国など一部の国を除いてほとんどの国では新型コロナ以前のように国際線での移動が活発になりつつあります。そこで、2023年夏ダイヤでのANAの国際線運航スケジュールを、2020年夏ダイヤと比較し、ANAの国際線がどのように変わったかを方面別に見ていきます。2020年夏ダイヤについてはANAの公式発表
を基準にしています。
2023年夏ダイヤについては、ANAの公式発表
およびその後に発表されたスケジュールと、4月第1週のスケジュールを基準にしています。
北米
北米路線は2020年夏ダイヤの段階で、
- ロサンゼルス(羽田14、成田)
- サンフランシスコ(羽田、成田)
- サンノゼ(羽田)
- シアトル(羽田)
- ワシントン(羽田)
- ニューヨーク(羽田、成田)
- ヒューストン(羽田)
- シカゴ(羽田、成田)
- バンクーバー(羽田)
- メキシコシティ(成田)
- ホノルル(羽田、成田14)
- 注:〇〇14:〇〇発着で1日2往復、週14便、数字がない場合は1日1往復、週7便
の11都市に就航しており、羽田発着が11路線、成田発着が7路線でした。このうち、ワシントン、ロサンゼルス(1往復)、ヒューストン、シアトル、サンノゼ、は2020年夏ダイヤでの羽田空港国際線発着枠拡大時に成田から移管された路線、サンフランシスコ―羽田線は発着枠拡大による新規就航路線です。
2023年夏ダイヤでは、
運休
- サンノゼ(羽田)
- ニューヨーク(成田)
減便
- ホノルル(成田14→7、2023年7/21から増便)
増便
- ニューヨーク(羽田7→10、9/1から14)
となっています。サンノゼ線が運休している以外は、ほぼ2020年夏ダイヤと同程度になっています。ホノルル―成田の減便分は7月からの夏休み期間は元の2往復(週14便)に、夏休み後は週10便の運航となります。ニューヨーク―羽田の増便分は、
ニューヨーク(2:00)→羽田(5:00+1)
羽田(22:55)→ニューヨーク(22:50)
となっており、これまでになかった羽田深夜早朝発着となっています。その一方で2020年夏ダイヤでは運行する予定だった成田―ニューヨーク便が消滅しています。
欧州
欧州路線は、2020年夏ダイヤの段階で、
- ロンドン
- パリ
- フランクフルト(週14便)
- ミュンヘン
- ウィーン
- ストックホルム
- ミラノ
- イスタンブール
- モスクワ
- デュッセルドルフ(成田)
- ブリュッセル(成田)
の11都市に就航予定でした。デュッセルドルフ、ブリュッセルを除く残りすべてが羽田発着で、ストックホルム、ミラノ、イスタンブール、モスクワは2020年夏ダイヤでの羽田空港国際線発着枠拡大時の新規就航路線です。
2023年夏ダイヤでは、
- ロンドン(羽田)
- パリ(羽田3)
- フランクフルト(羽田14)
- ミュンヘン(羽田3)
- ブリュッセル(成田2)
のみが運航しており、残りはすべて運休中です。欧州路線は新型コロナウイルスの影響に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の影響も受けており、2020年夏ダイヤでの新規就航路線どころか、それ以前からある路線すらも半分程度しか運航できていない状況です。運航している路線も、ロシア上空を通過できない影響で所要時間が2~3時間程度増えており、最も長い羽田→ミュンヘン線の所要時間は15時間を超えています。それに伴って、すべての路線で発着時間が2020年と比較して変更になっています。現地の出発・到着時間がこれまでと大きく変わらないように、日本の出発時間を早め、到着時間を遅くしています。
オセアニア、南アジア
オセアニア、南アジア路線は、2020年夏ダイヤの段階で、
- シドニー(羽田14)
- パース(成田)
- デリー(羽田)
- ムンバイ(成田)
- チェンナイ(成田3)
の5都市に就航していました。デリー線は2020年夏ダイヤでの羽田空港国際線発着枠拡大時に成田から移管された路線、シドニー線は2020年夏ダイヤで増便された路線です。
2023年夏ダイヤでは、
運休
- パース(2023年冬ダイヤから再開予定)
- チェンナイ
減便
- ムンバイ(週7便→週3便)
となっています。羽田発着の2路線はコロナ前の状況に復帰しています。比較的最近就航したパース線とチェンナイ線のうち、パース線は機材を大型化するほど順調だった路線で、冬ダイヤから復活予定ですが、チェンナイ線は就航時から週3往復なうえ、機材もダウングレードしていたので、復活するかは怪しいです。運航している路線のスケジュールは、2020年夏ダイヤとほぼ同じです。
東南アジア
東南アジア路線は、2020年夏ダイヤの段階で、
- バンコク(羽田21、成田)
- ハノイ(成田)
- ホーチミンシティ(羽田、成田)
- プノンペン(成田3)
- ヤンゴン(成田)
- クアラルンプール(羽田、成田3)
- シンガポール(羽田14、成田)
- ジャカルタ(羽田14、成田3)
- マニラ(羽田、成田)
の9都市に就航していました。羽田空港国際線の新規就航に伴い、いくつかの路線が2019年冬ダイヤと比較して減便されていました。
2023年夏ダイヤでは、
運休
- プノンペン
- ヤンゴン
減便
- バンコク―羽田(週21便→14便)
- ジャカルタ―羽田(週14便→週12便)
- クアラルンプール―羽田(週7便→週5便)
増便
- クアラルンプール―成田(週3便→週7便)
となっています。東南アジア路線は、北米との乗り継ぎ需要の関係で成田線が順調に復活している印象です。クアラルンプール線に至っては、2020年夏ダイヤで成田発着便が減便されていましたが、2023年では逆に羽田発着便が減便されています。運休しているプノンペン線は2020年12月に一度再開していましたが、2021年3月末から再度運休になっています。政府レベルで再開要請が出されているそうです。
同じく運休しているヤンゴン線については、2021年2月に発生したクーデターに伴う政治不安定が解決しない限り、復活は厳しそうです。
東アジア(中国以外)
中国を除く東アジア路線は、2020年夏ダイヤの段階で、
- 香港(成田、羽田、関西)
- 台北桃園(成田)
- 台北松山(羽田14)
- ソウル金浦(羽田21)
- ウラジオストク(成田3)
でした。
2023年夏ダイヤでは、
運休
- 香港(関西)
- 台北桃園(成田)
- ウラジオストク(成田)
減便
- 香港(成田7→3)
となっています。香港-成田線は例外的に運行する日も多くあるようです。台北桃園については、台湾―日本間の他社便でも増便が進んでいることから、需要的には復活させてもよい気がしますが、成田路線なのでこのまま撤退するつもりかもしれません。ウラジオストクについては、ロシアのウクライナ侵攻が続いている間は運休のままでしょう。
東アジア(中国)
中国路線は、2020年夏ダイヤの段階で、
- 瀋陽(成田)
- 北京(羽田14、関西)
- 大連(成田、関西)
- 青島(羽田、成田、関西)
- 武漢(成田)
- 成都(成田)
- 上海浦東(成田21、羽田14、関西14)
- 上海虹橋(羽田)
- 杭州(成田、関西)
- 厦門(成田)
- 広州(成田、羽田)
- 深圳(羽田)
の11都市(12空港)に就航していました。このうち、羽田―深圳線と羽田―青島は2020年夏ダイヤでの羽田空港国際線発着枠拡大時の新規就航路線です。中国は新型コロナ関連の政策でいまだに入国に条件が付けられており、路線の復帰が遅れています。
2023年夏ダイヤで運航予定の路線は、
- 北京(羽田5, 4/10から7、成田2)
- 上海浦東(羽田)
- 上海虹橋(羽田)
- 大連(成田2)
- 青島(成田4)
- 杭州(成田3)
- 広州(成田1.5((週2便のうち、1便の片道で旅客扱いなし)))
- 深圳(成田2)
となっており、半数近くが運休、多くの路線で貨物をメインとした週数便の運航となっています。2020年夏ダイヤから就航予定だった深圳線は、発着を成田に振り替えて就航しています。最近になってようやく中国の新型コロナ関連の規制が緩まりつつあるので、中国の政策次第では2023年の夏ダイヤ期間中にはさらに復帰が進むかもしれません。関西路線は全滅しており、どの程度復活するかも気になるところです。
まとめ
2023年夏ダイヤでのANA国際線の路線について、2020年夏ダイヤとの比較を行ってみました。ウクライナ侵攻の影響が強い欧州路線や新型コロナ関係の規制が続く中国路線を除いて、多くの路線で2020年夏ダイヤに近いスケジュールとなっていました。ここからさらに国際線の復旧率を高めるためには、政治的な問題の解決が必要になる部分が多いです。最も、コロナ禍で機材を多数手放しているため、政治的な問題が解決しても今度は機材不足ということになる可能性もありますが。ともあれ、今後が楽しみです。